フードデリバリー配達員が事故に遭った話③ ~お金の不安と弁護士特約~
「事故発生直後の様子は前回の記事をご覧ください。」
事故が発生してから、私が真っ先に考えたのは体のことではありませんでした。
「これからの生活はどうなるんだろう」
というお金の不安でした。
会社員であれば有給休暇や傷病手当などの制度がありますが、私は個人事業主です。
働かなければ収入はゼロになります。
最近では個人事業主向けの労災保険もありますが、私は加入していませんでした。
そのため、事故後の私は「生活は成り立つのか」ということばかり考えていました。
休業補償の現実
「事故発生当日の状況はこちらにまとめています。」
事故当時、私は任意保険に加入しており、弁護士特約も付帯していました。
しかし弁護士特約を使うかどうかで悩みました。
弁護士に依頼すれば補償額が適正になる可能性は高い。
ただし解決まで時間がかかる。
一方、自分で進めれば早く終わる可能性はあるが、補償額は低くなる傾向がある。
当時の私は一日でも早く補償金を受け取りたい気持ちが強く、なかなか決断できませんでした。
もし十分な貯蓄があれば、もっと冷静に考えられたかもしれません。
しかし現実にはそうではありませんでした。
自分で計算して愕然とした
個人事業主の休業補償は、一般的に前年の確定申告書を基準に計算されます。
青色申告書の所得額を365日で割り、1日あたりの休業損害額を算出する方法です。
私は自分なりに計算してみました。
すると日額は約7,500円。
12日間休業した場合、およそ9万円程度になる計算でした。
もちろん保険会社から提示された金額ではなく、あくまでも自分で試算した数字です。
しかし私はその数字を見て愕然としました。
なぜなら、その時期の私はフードデリバリーのクエストをこなせば、1週間で20万円近い売上を出せる状況だったからです。
12日間あれば40万円近い売上になる可能性もありました。
それなのに休業補償の試算は約9万円。
私は強い憤りを感じました。
事故に遭わなければ40万円近く稼げたかもしれない。
それなのに被害者である自分が受け取れる補償は9万円程度なのか。
正直なところ、
「事故の被害者なのだから、むしろ収入が減らないように補償されるべきではないのか」
と思いました。
毎日事故のことばかり考えていた
もちろん調べていくと、
通院期間や慰謝料によって最終的な補償額は変わることも知りました。
しかし私は納得できませんでした。
なぜ被害者である自分が、補償を受けるために色々調べたり、手続きをしたり、悩み続けなければならないのか。
そんな気持ちが強くなっていました。
毎日ネット検索を繰り返し、事故関連の記事ばかり読んでいました。
考えても答えが出ないことを延々と考え続けていました。
その結果、完全に無気力状態になり、他のことがほとんど手につかなくなっていました。
稼働再開でさらに複雑な気持ちになった
4月13日。
私はフードデリバリーの稼働を再開しました。
そして、その週は約20万円近い売上を出すことができました。
その瞬間、嬉しさよりも悔しさが込み上げてきました。
「休業しなければよかった」
「事故に遭わなければよかった」
そんなことばかり考えてしまいました。
しかし同時に、こんな精神状態で保険会社と交渉しても上手くいくはずがないとも感じていました。
保険会社は事故対応のプロです。
感情的になったところで、まともな交渉になるとは思えませんでした。
そこで私は考えを変えました。
「プロにはプロをぶつけるしかない」
そう思うようになったのです。
弁護士特約を使う決断
とはいえ、まだ迷いはありました。
私にとっては大金ですが、世間的には決して大きな事故案件ではありません。
こんな案件で弁護士に依頼してもいいのだろうか。
そんな遠慮もありました。
弁護士特約には大きく2つの利用方法があります。
ひとつは自分で弁護士を探して依頼する方法。
もうひとつは保険会社に弁護士を紹介してもらう方法です。
ネット上では「自分で探した方がいい」という意見が多く見られました。
しかし当時の私は精神的に限界でした。
休業補償をどうすれば本来の収入に近づけられるのか。
毎日そればかり調べ続けていました。
だから私は保険会社から紹介を受ける方法を選びました。
肩の荷が少し下りた
弁護士の先生とは一度面談しました。
私は事故後に感じていた不満や不安をすべて話しました。
先生からは、
「確かに難しい部分はありますが、できる限り対応していきましょう」
と言っていただきました。
さらに、
「この交渉を個人で行うのはかなり大変ですよ」
とも言われました。
その言葉を聞いた時、肩の荷が少し下りた気がしました。
まだ保険会社との交渉は始まっていません。
通院も終わっていません。
何も解決していない状況でした。
それでも、
「もう自分一人で抱え込まなくていい」
そう思えたことは大きかったです。
この経験を無駄にしたくない
今振り返ると、もっと早く弁護士特約を利用しても良かったと思います。
しかし、この2週間の苦悩は決して無駄ではなかったとも思っています。
事故に遭うと、体だけでなく心も大きなダメージを受けます。
夜眠れなくなることもあります。
何もやる気が起きなくなることもあります。
お金の問題が重なると、その苦しさはさらに大きくなります。
もちろん、十分な貯蓄があれば感じ方は違ったかもしれません。
ですが今回の事故で私は、
「被害者だからといって、自分が思い描く形で報われるとは限らない」
という現実も知りました。
だからこそ私は、これからも安全運転を心掛けたいと思います。
自分が加害者にも被害者にもならないために。
そして、この苦しい経験を少しでも誰かの参考にできればと思っています。
▼事故シリーズ
第1話:事故発生編
第2話:救急搬送・検査編

